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732.『唯信鈔』、『唯信鈔文意』を読む(29):名号の讃嘆(18)

20210405清美寺

  前回からもう一度『唯信鈔』に戻って、親鸞聖人が「如来が弘誓をおこされた様子は、この『唯信鈔』に詳しく示されている」とされた部分について学んでいます。
 前回の部分では、法蔵菩薩が師である世自在王仏に懇請され、世自在王仏はこれを容れて二百十億の浄土の人天や国土の良し悪しをすべてお見せになったということが記されていました。

 引き続き、本日の御文と現代語訳です。

 法蔵比丘これをききこれをみて、悪をえらびて善をとり、粗をすてて妙をねがふ。たとへば、三悪道ある国土をば、これをえらびてとらず、三悪道なき世界をば、これをねがひてすなはちとる。自余の願もこれになずらへてこころ を得べし。このゆゑに、二百一十億の諸仏の浄土のなかより、すぐれたることをえらびとりて極楽世界を建立したまへり。たとへば、柳の枝に桜のはなを咲かせ、二見の浦に清見が関をならべたらんがごとし。これをえらぶこと一期の案にあらず、五劫のあひだ思惟したまへり。

 (説法を聞き諸仏の国土を観た法蔵比丘は、悪をえりわけ善をとり、粗悪なものを捨てて微妙(みみょう)なものを願いました。たとえば地獄・餓鬼・畜生の三悪道のある国土をえりわけてとらず、このようなもののない世界を願ってとりました。そのほかの願いも、これと同じように心がけられました。
 このようにして二百十億の諸仏の浄土のなかからすぐれたところ選びとって極楽世界を建立されました。それは、たとえば柳の枝に桜の花を咲かせ、二見ヶ浦に清見ヶ関をならべたような素晴らしいものでした。こうして極楽世界を選びとった様は、ただ一生という短い間だけではなく、五劫という大変長い時をかけて、深く思いをつづけられたのです。)

 聖覚法印が「粗をすてて妙をねがふ。」と記されたこの部分をどのように表現したらよいのか迷うところです。二橋進氏はこの部分を「粗雑なものを捨てて純粋なものを願いました。」としておられます。
 聖覚法印は、「粗」には「あらくわるきなり」、「妙」には「たえによきこと」と左訓を付しておられます。それで「妙」の部分を「微妙(みみょう)」としてみました。「微妙(みみょう)」が仏教語として「仏教の真理・教えやそれを悟る智慧の深遠ですぐれたさまを形容する語」とされていたことを思い出したからですが、難しいところです。

 このように、世自在王仏によって現ぜられた二百十億の仏国の良し悪しをみて、法蔵菩薩はその中の良きものを選びとり、極楽世界を建立されたと聖覚法印は記されました。

 『無量寿経』ではこの様子が次のように記されています。
 「そのとき法蔵菩薩は、世自在王仏の教えを聞き、それらの清らかな国土のようすを詳しく拝見して、ここに、この上なくすぐれた願を起したのである。その心はきわめて静かであり、その志は少しのとらわれもなく、すべての世界の中でこれに及ぶものがなかった。そして五劫の間、思いをめぐらして、浄土をうるわしくととのえるための清らかな行を選び取ったのである。」
 そして、法蔵菩薩は、世自在王仏の勧めに従って、四十八の願を述べられます。

 親鸞聖人は、『正信偈』で前回の部分に続けて次のように記されます。
  建立無上殊勝願 超発稀有大弘誓 五劫思惟之摂受 重誓名声聞十方
 (この上なくすぐれた願をおたてになり、世にもまれな大いなる誓いをおこされた。五劫もの長い間思惟してこの誓願を選び取り、名号をすべての世界に聞こえさせようと重ねて誓われたのである。)
 
 聖覚法印は、法蔵菩薩が選び取られた極楽世界を私たちが想像しやすいように、「柳の枝に咲いた桜」「二見ヶ浦に清見ヶ関を並べた」という表現で伝えられます。私たちになんとしてでもその素晴らしさを知ってもらいたいと願われていることが感じられる部分です。そして、親鸞聖人が「如来の弘誓をおこしたまへるやうは、この『唯信鈔』にくはしくあらはれたり」とされたのも、このような法印の思いを受けられたものだと思います。

(図は、清見ヶ関ゆかりの寺院である清見寺(せいけんじ)を描いたものです。)

 清見ヶ関というのは、現在の静岡市清水区興津にかつてあった関所のことだそうです。7世紀奈良時代に設けられたと考えられる関所ですが、鎌倉時代になると関所としての役割は低下したようです。しかし、駿河湾に面し、富士山や駿河湾の向こうには伊豆半島の天城連山を遠望するという景勝の地で、その後も清見潟という名前で広く知られていたようです。
 清見寺は奈良時代に創建された寺院で、この清見潟を望む高台にあるお寺です。

(このブログは毎週2回、月曜日と金曜日に新しい記事を載せる予定ですので、また覗いてみてください)

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