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711.ご紹介します(25):「市制百年 宇部市の誕生」


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  前回の記事でご紹介しました講演会の講師の内田鉄平氏が書かれた、『市制百年 宇部市の誕生』という本をご紹介します。昨年の9月に宇部日報社から発行されたものです。

 内田氏は、このブログでもご紹介しました『石炭都市宇部の起源』という書で、石炭の採掘が江戸時代から始まり、明治維新とその後の進展の中で発展してきたことを後付けされました。今回の書では、この石炭産業の発展が100年前の宇部市の市制施行とどのように関わっていたのかということについて記されています。

 前回ご紹介しました内田氏の講演に沿ってこの間の流れを見てみます。
 長州藩の永代家老の福原家の領地である宇部村地区では、幕末期より石炭の採掘が盛んになりました。明治維新により禄を失うことになる福原家の家臣は、「宇部炭坑会社」を設立し石炭採掘を管理することで、この事態に対応しようとします。次いで、明治19(1886)年にその後継組織として「宇部共同義会」を創設します。
 明治20年以降、宇部共同義会のもとで、旧の福原家領内に多くの炭坑が開山されます。明治30年には沖ノ山炭坑が開かれ、宇部の石炭業は大きな成長期を迎え、それに合わせて炭坑の周辺事業として多くの事業が誕生、成長していきます。
 このような産業の急速な発展により、元々はほとんど人家のなかった新川地区に多くの人々が住むようになりました。人口6,000人程度だった宇部村は明治40年には10,000人を超え、大正9年の第1回国勢調査では40,000人に届こうかというように急増します。
 このような社会環境の急変に伴って、様々な問題も発生するのですが、それらへの対処も含めて市制への移行が必要だと考えられ、大正10(1921)年、宇部村から「町」を飛び越して一気に宇部市制施行となります。

 このような急速は発展、拡大が可能になった要因は何だったのだろうか、という目で『市制百年 宇部市の誕生』を読みますと、対外、対内の両面で旧宇部村が一体となって対処できたからではないかと感じられます。
 それが可能になった背景には、この地区がかつての福原家の領地に当り、旧の領主、家臣、村の人が明治維新を超えても一体感を持ち続けることができたことがあるのではないかと思います。

 その一つ、対外的な関係では、同書で「宇部モンロー主義」という言葉で紹介されていますが、外部に頼らず独自に課題に対処する姿勢にあります。宇部地区の炭坑は、筑豊地方の炭坑に比べて規模が小さく、大きな外部の資本からは注目されなかったのだそうです。それで、やむを得ずに自身で資金を調達(寄付や出資を募るなど)して事業を展開していきました。その場合も、資金を募る対象は宇部村内の人びとに限ったようです。

 もう一つは、対内的にも地域一体になって対処できたということです。
 炭坑事業の急速な発展を推進した組織として、先に挙げた明治19年設立の「宇部共同義会」があります。この組織は社会事業を行う部門と炭坑の管理を行い収益をあげる部門とを持った組織となっていて、経済的にこの地域を支える機能を持っていました。
また、明治21年に「宇部達聰会」という組織が創設されます。この組織は、共同義会を支援するとともに、村会議員の推薦を行うなど、村内の世論醸成を支える機能を持ったもののようです。この組織の運用にかかる費用は共同義会が負担していたようです。
 これらの組織の他、村政にも旧福原家の家臣が多くかかわっていました。このように、旧福原家の関係者が共同義会、達聰会、行政の要職を占め、その三者が三位一体となって宇部の急速な発展を推進していったものと思われます。そしてその中心は、経済的な支えとして機能していた共同義会ということになるようです。

 その他、この宇部地区の発展について、世論を喚起し時には批判していたものとしてマスコミがあったことも知りました。現在は宇部日報社となっていますが、かつての宇部時報社の設立の経緯や記事も紹介されていて、当時の熱気を感じることができました。

 このように、行政、経済、世論が一体となって産業発展に邁進していった姿が浮かび上がってきます。それが、宇部では外部からの関与を必要とせずに行われたところに特徴があるように思われます。「モンロー主義」とされる所以でしょうが、一方で排他的な方向に向かう可能性もあったのではないかと想像しますが、それもうまくコントロールしながら現在の宇部市の姿になったものと思われます。

(図は、同書の表紙、裏表紙です)

(このブログは毎週2回、月曜日と金曜日に新しい記事を載せる予定ですので、また覗いてみてください)
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