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614.御絵伝に見る親鸞聖人のご生涯(49):下巻第五段(5)

11.下巻第五段s

 少し間が空きましたが、『御絵伝』に戻ってまいりました。

 御絵伝の下巻第五段を学んでいます。常陸国で親鸞聖人のお弟子さんだった平太郎さんという人が、仕えている武士のお供をして熊野権現に参らなければならなくなります。神祇に参拝することは聖人の教えに反することだと思った平太郎さんは、聖人にどうしたらよいのかと教えをいただきに聖人の許を訪ねます。 その平太郎さんに対して、親鸞聖人は、自らの発心で権現に参拝するのではなく、主人に仕えて参るのであればやむを得ない、とお話になります。
 今回の部分は、聖人のみ教えを受けた平太郎さんが熊野に参詣されたときのことが記されています。
  『御伝鈔』の御文と平松令三氏の『聖典セミナー 親鸞聖人絵伝』の訳文です。

 これによりて平太郎熊野に参詣す。道の作法とりわき整(ととの)ふる儀なし。ただ常没(じょうもつ)の凡情(ぼんじょう)にしたがひて、さらに不浄をも刷(かいつくろ)ふことなし。行住坐臥(ぎょうじゅうざが)に本願を仰ぎ、造次顛沛(ぞうじてんぱい)に師教をまもるに、はたして無為(ぶい)に参着(さんちゃく)の夜、件(くだん)の男夢に告げていはく、証誠殿の扉を排(おしひら)きて、衣冠(いかん)ただしき俗人(ぞくじん)仰せられていはく、「なんぢ、なんぞわれを忽緒(こつしょ)して汚穢(わえ)不浄(ふじょう)にして参詣するや」と。

 平太郎はこのお言葉を聞いて、熊野に参ることにいたしました。普通の熊野詣の道中には、独特の作法がありますが、平太郎は特別にそんな作法もいたしませんでした。ただ迷いの世界に沈んでいる凡夫としての気持ちのままに行動し、神道で言う精進潔斎などもしませんでした。いつも阿弥陀如来の本願を仰ぎ、ちょっとした間にも、親鸞聖人の教えを守って、熊野への旅をつづけました。
 すると、何事もなく到着したのですが、その夜その平太郎に夢のお告げがありました。本宮中央の「証誠殿」の扉が開いて、貴族としての正装をした俗体の人が現れて、「お前はなんで私を軽んじて、精進潔斎せず不浄の体で参詣するのか」と叱られました。

 今回の部分について、平松令三氏は同じ出来事を記した『親鸞聖人御因縁』という書物のことを紹介しておられます。
 その書には、『御伝鈔』で「道の作法とりわき整ふる儀なし。ただ常没の凡情にしたがひて、さらに不浄をも刷ふことなし。」と記されている部分について具体的にその内容が記されているということです。
 それによりますと、平太郎さんはいわゆる「別火精進」を行わなかった、人々が「南無証誠大菩薩」と唱えているのに、平太郎さんだけは「南無阿弥陀仏」と称えたとか、田辺で難破船があり死骸が海岸に打ち上げられた事件があって、死の穢れを忌んで誰も近づかなかったのを平太郎さんが夜にまぎれてとりのけた、といった具体的なかつ臨場感のある逸話が記されているということです。
 そのようなことから、この平太郎さんの熊野詣は実際にあったことで、覚如上人はその事実を聞かれて御伝鈔に取り入れられたのではないか、とされています。

 この「別火精進」という言葉を初めて耳にしたのですが、神道では火は不浄、汚れたものとされていて、火を通じて穢れが伝わらないために使う火を別にするという風習があったのだそうです。平太郎さんは、そのような迷信に惑わされることなく行動したということが伺えます。また、神道と仏教の死というものに対する向き合い方の違いがこの逸話に言い表されているようです。それだからこそ、本宮から出てきた人物に平太郎さんが「叱られた」という事態になったのだと思われます。
 
(図は、自坊の「御絵伝」下巻第五段です)

 絵は、手前と後方の二つの部分に分けて描かれています。
 前方の絵は、熊野本宮大社を描いたものだとされています。御絵伝によって図柄が違ったものがあるようですが、右の横になっている人物が平太郎さんだと思われます。左には平太郎さんの主人の武士とお供が3人、中央の人物は一行の先達をつとめた人だとされています。他には女性も3人描かれています。女人禁制とされた高野山に対して、熊野は女性を受け入れていたのだそうです。
 後方の絵は、朱塗りの熊野の本殿で、左の人物は貴族の正装をしていますがこれが熊野権現で、向かいに座っておられるのが親鸞聖人となります。なぜ親鸞聖人がここに登場されているのかということについては、次回の『御伝鈔』に記されます。

 右上に僧侶の下半身が2人分描かれていますが、これは次の段の図がはみだしているものです。

(このブログは毎週2回、月曜日と金曜日に記事を載せる予定ですので、また覗いてみてください)
 
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