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599.御絵伝に見る親鸞聖人のご生涯(44):下巻第四段(2)

20191223箱根霊告s

  御絵伝の下巻第四段の後半部分です。少し長くなりますが、『御伝鈔』のこの段の残りの全文です。

 「ときに聖人歩み寄りつつ案内したまふに、まことに齢(よわい)傾きたる翁のうるはしく装束したるが、いとこととなく出であひたてまつりていふやう、「社廟(しゃびょう)ちかき所のならひ、巫(かんなぎ)どもの終夜(よもすがら)あそびしはんべるに、翁もまじはりつるが、いまなんいささか仮寝(よりい)はんべるとおもふほどに、夢にもあらず、うつつにもあらで、権現仰せられていはく、〈ただいまわれ尊敬をいたすべき客人、この路を過ぎたまふべきことあり、かならず慇懃(いんぎん)の忠節を抽(ぬき)んで、ことに丁寧の饗応をまうくべし〉と云々。示現いまだ覚めをはらざるに、貴僧忽爾(こつじ)として影向(ようごう)したまへり。なんぞただ人にましまさん。神勅(しんちょく)これ炳焉(へいえん)なり、感応もつとも恭敬(くぎょう)すべし」といひて、尊重(そんじゅう)屈請(くっしょう)したてまつりて、さまざまに飯食(ぼんじき)を粧(よそ)ひ、いろいろに珍味を調(ととの)へけり。 」

 「そこで聖人はその家の入口に歩み寄って戸を叩き、『御免ください』と声をかけると、立派な衣装をつけたずいぶん高齢の老人が、すぐに出てきて言うのには、『ここは箱根権現の社にほど近いところで、この地の習俗として、神に仕える者たちが夜を徹して遊びをいたしております。私のような老人もその中にまじって遊んでおりましたが、ちょっと物にもたれて居眠りをしてしまったようです。そのとき、夢だったのか幻だったのか、おぼろ気なことですが、権現さまが現れておっしゃるには、『私が尊敬しているお客人(賓客)が、ただいまこの道をお通りになる。失礼にならないように、とくに丁重におもてなしをして差し上げなさい』ということでした。そしてそのお告げの夢がまださめ終わらないうちに、あなたが突然としてここにお姿を現されたのです。あなたはただ人であろう筈がありません。権現さまのお告げがそれを明らかに示しています。あなたのおこしを権現さまが感じ取られたこと、これはつつしみ敬わねばなりません』と言って、聖人たちを丁重に招き入れ、とりどりの珍味を用意し御馳走をしてもてなしてくれたのでした。」

 この段では、親鸞聖人が関東から都に帰られる途中、箱根で起きた出来事について記されています。
 深夜に聖人のご一行は箱根の険しい山路にさしかかり、明け方近くになってようやく人家にたどり着かれます。そこで立派な身なりの老人の出迎えを受けられるのですが、老人は「自分は権現さまからのお告げで、権現さまが尊敬されるご一行が来られるから丁重におもてなしするようにと言われています。」といい、珍味の御馳走をされた、という出来事です。

 平松令三氏は、覚如上人が箱根権現が親鸞聖人を丁重にもてなしたという「箱根霊告の段」をなぜここに入れられたのかということについては、まだ分からないところが多い、とされています。なぜ箱根権現が聖人のご一行をもてなしたのかという理由を覚如上人は記されていないからです。

 この箱根権現は箱根の芦ノ湖のほとりにある神社で、源頼朝以降鎌倉幕府の歴代の将軍が尊崇を寄せ、隆盛を誇った神社だったそうです。覚如上人は、親鸞聖人がこの神社に詣でるのではなくこの地を通り過ぎようとされたときに、権現の方から丁重な扱いを受けたと記されていますので、覚如上人の神祇に対する姿勢を表そうとされているのかもしれない、と平松氏は記されています。
 そういえば、前の段「弁円済度」の段も、当時の山岳信仰(平松氏によれば、箱根権現もそうだということです)の修験者が聖人に帰依することになった経緯を記したものでした。

(図は、専修寺本の伝絵です)
 
 聖人のご一行が箱根神社の神官の老人と対している部分には、ちょっと見えにくいですが「聖人案内し給ふところ也」と注記されていますが、寺の御絵伝と比較しますと右の隅に追いやられているように見えます。
 そのかわり、鳥居と芦ノ湖のむこうに「芦河の宿也」「箱根権現の社壇也」「僧房等」などと注記され、人や馬も入った芦ノ湖周辺が風景画のように描かれています。また、御絵伝にありますような次の段(下巻第五段)の図は描かれていません。
 平松氏は、伝絵のこの段について「絵師が『ここぞ』とばかり腕を振るっている感じです。」と記されていますが、なるほどと同感させられます。

(このブログは毎週2回、月曜日と金曜日に新しい記事を載せる予定ですので、また覗いてみてください)

(お詫びと修正です)

 このブログには連続した記事の番号をつけて来たのですが、途中で間違っていたことが分かりました。前回が599番、今回も599番として正しい連番に修正しました。この番号は後から記事を確認する際に必要なものなのですが・・・。

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