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597.御絵伝に見る親鸞聖人のご生涯 (43):下巻第四段

20191213下巻四段自坊

  御絵伝は第四幅に入ります。第四幅の一番下の段です。

 『御伝鈔』の御文と訳文です。
 「聖人(親鸞)東関の堺を出でて、華城(かせい)の路におもむきましましけり。ある日晩陰(ばんいん)におよんで箱根の嶮阻(けんそ)にかかりつつ、はるかに行客(こうかく)の蹤(あと)を送りて、やうやく人屋(じんおく)の枢(とぼそ)にちかづくに、夜もすでに暁更(ぎょうこう)におよんで、月もはや孤嶺(これい)にかたぶきぬ。」

 「親鸞聖人は長年の関東での生活に別れを告げ、京都に帰る旅に出られました。その途中、日も暮れ暗くなってから、箱根のけわしい山路にさしかかったので困りましたが、どうにか旅人の歩いて行ったあとをたどって行くと、ようやく人家を見つけました。夜もふけて明け方近く、月も山の端に傾むいていました。」

 この「箱根霊告(はこねれいこく)」と呼ばれている段では、親鸞聖人が関東から京都にお帰りになる途中、箱根山でおきた出来事が記されています。

 親鸞聖人が関東から京都に戻られたのはいつ頃のことでどのような背景があったのか、ということについて様々な見解が示されていました。
 京都に戻られた時期については、聖人60歳から62,3歳のころだったとするのが定説になっているようです。
 一方、なぜ京都に戻られたのか、ということについては諸説が論じられ来ました。

 その一つは、聖人は『教行信証』を完成させるために京都に帰られたとする説です。聖人の主要なご著書である『教行信証』には多くの書物から文を引用しておられ、このような著書を完成させるためには豊富な参考文献が必要であり、それは京都に戻らないとできない、と考えられたことによります。しかし、戦後の坂東本の『教行信証』の研究の結果、すでに学びましたように『教行信証』の大綱は聖人が関東におられた間にほぼ完成を見ていた、ということが明らかになり、この説はその後後退していったようです。

 二つ目の見方は、当時念仏者集団に対して加えられた弾圧とも関連するものです。
 文暦2年(1235年)に鎌倉幕府は念仏の禁止を命じます。関東では親鸞聖人のみ教えは、幅広い階層に浸透していきました。お念仏ひとつでだれでも間違いなく救われる、と説く聖人のみ教えは、それまで救いの対象とはされていなかった多くの人々の力となりました。その一方で、どんなことをしても救われる、地獄に落ちるべき悪人が救われるのだからむしろ悪をなす方が救われる、とする誤った信仰も広がっていったとされています。そのようないわば「反社会的な」行動が念仏弾圧につながったものと思われます。笠原一男氏は『親鸞と東国農民』で、「親鸞自身、念仏の縁つきたらそのところを去る、という根本的態度を生涯を通じて貫き通したのである。」として、念仏弾圧に動いた関東の地で、その弾圧に対抗するのではなくその地を去るという対応を聖人は取られたのだとされます。

 これに対して、平松令三氏は「関東には多くの門弟が生まれていました。それらの門弟がいるのにもかかわらず、『念仏の縁つきた地』だといって立ち去ることは、それらの門弟を見放したことになりましょう。」とされ、念仏の禁圧が聖人の帰洛の原因ではないとされます。帰洛後の聖人と関東の門弟方とのやりとりなどからも門弟を見放したなどは考えらず、念仏弾圧が原因ではないとされます。逆に、氏は「関東教団がこの時期には安定してきたことが帰洛の原因だったのではないかと思っています。」と、関東での門徒集団が拡大安定して「これならもう大丈夫」と確認されて帰洛の腹を固められたとされます。

 また、赤松俊秀氏は『人物叢書 親鸞』で、聖人の帰洛はこの関東における念仏禁圧に因があるとしながらも、幕府が厳しい禁圧で臨んだとしても、門弟らの帰依支持を頼りに関東に永住する決意を変えることはなかっただろうが、「最後のよりどころと頼む門弟の信仰と行儀に根源があるのでは、親鸞としても別の道を選ぶほかはなかった」とされ、門弟たちの信仰と行儀の実態の方にその因がある、とされます。あるいは、以前見ましたような門徒集団の姿、弟子を囲い込み互いに争う姿などもその背景にあったのではないかとも思われます。

 このように親鸞聖人がこの時期に京都に帰ることを決意された理由には様々な見方があることが分かります。いずれにしても、聖人は考え抜かれて都に戻るという決断をされ、関東から都への旅に出られたということになります。

(図は、自防の御絵伝下巻第四段です)

 明け方近く、聖人のご一行が人家(実は箱根神社です)に着かれたところが描かれています。
 画面の左に描かれている図は次の下巻第五段にかかわる図で、今回の「箱根霊告」とは直接関連はありません。

(このブログは毎週2回、月曜日と金曜日に記事を載せる予定ですので、また覗いてみてください)


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