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595.最近の話題(38):日高実夫氏の自筆原稿(2)


20191206原稿     20191206米噛み岩

  先日、日高実夫氏の自筆の原稿についてご報告しましたが、今日はその中の一つをご紹介します。

原稿には、「郷土の昔噺し 天然記念物大岩郷 奇岩 米噛み岩の噺」という表題が付されていますが、大岩郷にある「米噛み岩」と呼ばれている奇岩(大きな石です)に関する昔噺が紹介されています。
私もこの岩についての言い伝えとして子供のころ聞いた記憶があり、このような形で文章に記されているのを読むことができてうれしく思いました。

原稿は、400字詰め原稿用紙8枚にボールペンで記されています。
「はじめに」として日高さんは次のように記されています。
 「国指定天然記念物大岩郷の中に昔しから米噛み岩と呼んでいる奇妙な形の一際大きな岩があり、それにまつわる昔噺しがある。幼年の頃、その噺しを聞くと日増しに近寄って見たい童心をかきたてられて、遊び仲間と恐る恐る岩郷に入り岩の間を這いながら見に行ったものである。岩の様子があまりにも噺しとぴったり合っているので、ほんとうにあった事と思った。一度見るとまた見たくなり、見に行っては、色々と幻想しあったものである。今では、あまり噺しも聞かれず殆ど廃れてしまったように思われるので書いて置くことにする。」

 その昔噺は次のように始まります。
 「昔し昔し、大岩郷のある金比羅山に、米噛みと呼んで大そう恐れられていた怪鳥のような怪獣が居たそうな。」

 このように、日高さんは「日本むかしばなし」のように話を始められます。娘さんからお聞きした日高さんの姿、謹厳で言い出したら引かなかったという日高さんがこのような文章を書いておられたことも、微笑ましく思いながら読ませていただきました。
以下、日高さんの文章を要約させていただきます。

 この怪鳥は大きな羽を持っていて、秋に、お百姓さんが精を出して育てた稲が稔るころになると飛んできて、稲穂をかみちぎり腹一杯食べて、金比羅山の奥に逃げていたのだそうです。しかし、お百姓さんは「あの米噛みは金比羅様に仕えているのかも知れんのう」と言って、諦めていました。
 ある年、天候が悪く作物ができず、その上米噛みに荒らされて食べ物がなくなったお百姓さんは、米噛みが金比羅様に仕えていようがいまいがともかく金比羅様にお願いしようと、お詣りし米噛みが米を取らないようにお願いをしました。
 それから間もなく、大きな鉞(まさかり)をかついだ樵(きこり)姿の大男が村に現れ一夜の宿を請います。大男を泊めてやった村の長は、この米噛みの被害について樵に話をします。すると大男は、自分が米噛みを退治しよう、そのために村の各家から一握りの米を持ち寄って夕飯を炊くようにと言います。
 大丈夫かなといぶかりながらも村人は大切な米を使ってご飯を炊きます。その匂いを嗅いだ米噛みは、自分も腹をすかせていたので、飛び出して襲ってきます。大男は大鉞を振り回し対抗し、米噛みの右の羽根元に切りつけ深手を負わせ、さらに米噛みの背中に一撃を加えます。逃げ出した米噛みは、大岩郷を横切って金比羅山に逃げようとしましたが、力尽きて動けなくなりました。ついに右羽根が落ち、背中の深手も大きく開いた形で大岩郷の中で蹲ったまま、今のような姿の岩になったのだそうです。

 日高さんは、現在の大岩郷の「米噛み岩」について次のように記されています。
 「ついでに、米噛み岩の姿と様子であるが、大岩郷の中程より稍々上の方にあって、背筋の少し下部が前後に長く大きく裂けている。右側には、羽根に当たる平たい岩が付根より外れた跡がはっきりしている。その真下に羽根に当る平たい岩が落ちている。両方共に外れた跡口が全く同じである。左側は平たく出張って左羽根を思わせる。又、その様子は麓の部落の方に向って上向きに首を長く伸し、如何にも苦しげに吠え叫ぶようである。」

 この「米噛み岩」は大岩郷の奥の方にあって、子供のころはそこまで行くのが難しい場所でした。その後、大岩郷に行くことも少なくなって、結局一度も「米噛み岩」までは行っていないように思います。日高さんの原稿を読んで、一度「米噛み岩」まで行ってみたいと思うようになりました。さあ、あの岩波を越えて到達できるでしょうか?

 子供のころにこの話を聞いたときにはそのようなことは考えませんでしたが、この「米噛み」は何を表しているのだろうか、と思っています。対抗していた敵対勢力、無理難題を言ってくる領主、人間の力が及ばない自然現象、そのようなものを象徴しているのかもしれないなあ、と思いながら原稿を読んでおりました。

(写真左は日高さんの自筆原稿、右は現在の「米噛み岩」です)

 累々たる大岩のむこう、右上方に「米噛み岩」があります。昔は、岩まで行った証に遠くから見てもわかるように名前を石で刻んで来た、という話を聞いたことがあります。今だったら、天然記念物を損傷する行為で問題になるでしょうが。

(このブログは毎週月曜日と金曜日に新しい記事を載せる予定です。また覗いてみてください。)

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