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547.御絵伝に見る親鸞聖人のご生涯 (31):下巻第一段(3)

20190520下巻第一段2

 しばらく間が空きましたが、引き続き御絵伝下巻第一段の3回目になります。

 『御伝鈔』の御文と訳文です。

 主上臣下法に背き義に違し、忿りをなし怨を結ぶ。これによりて真宗興隆の大祖源空法師ならびに門徒数輩、罪科を考へず、みだりがはしく死罪に坐す。あるいは僧の儀を改め、姓名を賜ひて遠流に処す。予はその一つなり。しかればすでに僧にあらず、俗にあらず。このゆゑに禿の字をもつて姓とす。空師ならびに弟子等、諸方の辺州に坐して五年の居諸を経たり」と云々。

 するとその上奏に対して天皇やそれにつかえる臣下たちは、法律をはきちがえ、道理にそむいて、腹をたて、不実な行為をするに至りました。 このために、真実の仏教を興隆させる中心人物の源空法師とその門弟数人は、罪の内容を検討されることもなく、無法にも死罪に処せられた者があり、また僧の身分を剥奪され俗人の姓名をつけられて、遠国へ流罪になった者もありました。私も流罪になった一人です。こうなったらもはや僧侶でもないし、俗人でもありません。ですから、これから私は禿の一字をもって私の姓とすることにしました。こうして源空法師とその弟子たちは、辺鄙な国に流されて、五年の月日がたちました。」と書いておられます。


 覚如上人が親鸞聖人の言葉を引かれて記されているように、朝廷は興福寺の訴えを受けて、それまでの姿勢を変えて法然聖人始め専修念仏の一門を罰するという動きに出ました。その結果、善綽房、性願房、住蓮房、安楽房の4名が死罪、法然聖人、親鸞聖人を含む8名が流罪に処せられるという苛烈な断罪となりました。
 親鸞聖人がこの弾圧を「法に背き義に違し、忿りをなし怨を結ぶ」と厳しい口調で非難されているのは、この処罰がそれまでの例に比較して格段に厳しいものだったからです。平安の時代には長く死罪は行われず、1156年に保元の乱で敗れた源平の武将が斬られるまで350年間その例はなかったということです。その死罪が僧侶4名に対して、法律も慣行も無視して強引に行われたのです。
 平松令三氏によりますと、当時僧侶を罰するには「僧尼令(そうにりょう)」という奈良時代に制定された法律によるしかなかったということです。しかも、その法律によって死罪に処せられたという例は見られず、流罪も国家体制への謀反とみなされるような重罪、例えば平家一門の支配を転覆させようとした罪に問われた僧俊寛が喜界島に流されたようなケースが対象となっていました。しかもこのような処罰を実施する場合は、朝廷でしかるべき手続きがなされていたのですが、今回の専修念仏一問の処罰にあたってはそのような手続きもとられなかったとされています。
 
 朝廷がこのように専修念仏断罪に舵を切った背景には、後鳥羽上皇が熊野詣に出かけられた12月に、法然聖人門下の住蓮房、安楽房たちが催した法要に上皇の2人の女房が参詣し、発心し出家するという事件がありました。帰京した後鳥羽上皇はこれを知り激怒されます。そのことで、朝廷の専修念仏に対する姿勢が一変し、上記のような非常に厳しい断罪になったとされています。いわば、後鳥羽上皇の感情的な強権発動により、4名の死罪、法然聖人、親鸞聖人はじめ8名の流罪が断行されました。

 その結果、法然聖人は還俗させられ土佐の国に流罪、親鸞聖人も還俗させられ越後に流罪となりました。親鸞聖人はそのことを受けて、自分は「僧にあらず、俗にあらず(非僧非俗)」と称されました。
 この場合の「僧」は、寺院において持戒を守り修行に励み、仏法をもって王法を支える国家公認の僧を意味しますが、今回還俗させられた聖人は名実ともに「非僧」になられたことになります。しかし一方で、法然聖人のお導きによりお念仏の教えに帰依されたのですから、世俗の権力を尊しとする「俗」ではなく「非俗」でもあります。そして聖人は「禿の字をもつて姓とす」と記されていますが、「禿」は「剃髪もせず結髪もしないさま」を表す言葉だということで、以後聖人はご自身のことを「愚禿釋親鸞」と称されることになります。

(図は、自坊の御絵伝の下巻第一段の後半の二図です)

 下は、法然聖人が輿に乗ろうとされている所です。上は親鸞聖人の輿を描いており、右が輿を運び出そうとしている所、左にはすでに門を出て路上を進んでいる所が描かれています。法然聖人はお姿が描かれていますが、親鸞聖人の方はお姿が見えません。
いずれも、お送りしている門弟の方々は袖に顔を当てて涙にくれています。
 その他に、武器を持った武士が描かれていますが、これは「検非違使」呼ばれ都の治安維持などを担当していたということです。

(このブログは毎週2回、月曜日と金曜日に新しい記事を載せる予定ですので、また覗いてみてください)
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