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511.御絵伝に見る親鸞聖人のご生涯 (21):上巻第六段(3)

20190215伝絵信行両座西本願寺本

 「信行両座」の段の3回目になります。御文と訳文です。

 「そのとき三百余人の門侶(もんりょ)みなその意(こころ)を得ざる気あり。ときに法印大和尚位聖覚、ならびに釈信空上人法蓮、「信不退の御座(みざ)に着くべし」と云々。つぎに沙弥法力[熊谷直実入道]遅参して申していはく、「善信御房の御執筆(ごしゅひつ)なにごとぞや」と。善信上人のたまはく、「信不退・行不退の座をわけらるるなり」と。法力房申していはく、「しからば法力もるべからず、信不退の座にまゐるべし」と云々。
 よつてこれを書き載せたまふ。ここに数百人の門徒群居すといへども、さらに一言をのぶる人なし。これおそらくは自力の迷心に拘(かか)はりて、金剛の真信に昏(くら)きがいたすところか。人みな無音(ぶいん)のあひだ、執筆(しゅひつ)上人[親鸞]自名(じみょう)を載せたまふ。ややしばらくありて大師聖人仰せられてのたまはく、「源空も信不退の座につらなりはんべるべし」と。そのとき門葉(もんよう)、あるいは屈敬(くっけい)の気をあらはし、あるいは鬱悔(うつけ)の色をふくめり。」
 
 「それを聞いた三百余人の門弟たちは、一瞬その意図がよくわからないようでしたが、そのとき聖覚法印と法蓮房信空とが「信不退の座にすわりましょう」と言いました。そこへ遅参してやって来た熊谷直実入道(法力房蓮生)が「善信房は何を書いているのですか」と尋ねましたので、聖人が「信不退の座と行不退の座とに分かれてすわってもらっています」と答えますと、法力房は「それでは私も仲間に入れてください。信不退の座の方へ参ります」と申しました。
 それで聖人はそのように記録されました。その場に数百人の門徒が群集していましたが、一言も言葉を発するものがありません。これはおそらく自力の迷いにこだわって、他力金剛の信心に暗い結果からこうなったのだろうか、と思われました。人びとがみな黙っているので記録係をしていた親鸞聖人は自分の名を信不退の座の方に書き載せられました。
 そしてしばらくすると、法然聖人がおっしゃいました。「私も信不退の座の方にならびましょう」と。そのとき門弟たちは、ある者は敬いの様子を表し、ある者は後悔からふさいだ様子を見せたのでした。」


 前回、親鸞聖人は法然聖人のお弟子さんに対して、「弥陀の本願を信じる信と称名を励む行のどちらが往生を遂げる因なのか、考えを示してください」と問いかけられましたが、今回、その問いに対するお弟子さん方の動きが記されています。
 覚如上人の記されたところでは、法然聖人と親鸞聖人を除くと、3人のお弟子さんが信不退の座につかれたということです。300人を超えるお弟子さんの中で、信不退についたひとが3人だけだったのかどうかは分かりませんが、お弟子さんの多くはその問いかけの意図がよく分からなかったようです。そのような中で、聖覚法印と法蓮房信空、法力房蓮生の3人がはっきりと意思を表明されたということになります。

 この聖覚法印という方は、比叡山の僧で『唯信鈔(ゆいしんしょう)』という書を著された方です。親鸞聖人はこの書を高く評価されご自身何度も書写され、『唯信鈔文意(もんい)』という注釈書を書かれて門弟にこの書を学ぶように勧められたと伝えられています。
 次の法蓮房信空という方は、法然聖人の門下の最長老だった方だと伝えられています。法然聖人の念仏の教えに対して在来の仏教から攻撃を受けた際に、法然聖人は「七箇条制誡(しちかじょうせいかい)」というという文書を提出されました。平松令三氏によりますと、法然聖人に次いで、190人のお弟子さんの筆頭として署名した人がこの法蓮房信空で、このことからも門下の中でも特に重要な位置におられたことが伺えます。
 法力房蓮生という方は、元は熊谷直実という武士で源頼朝に仕え源平の戦にも戦功を立てた人です。兵庫一の谷の合戦で17歳の若い平敦盛を討ち取ったのですが、そのことで世の無常を感じたことが後の出家の機縁だとされています。

 親鸞聖人とこの3人が信不退の座につかれた後に、法然聖人も同じ信不退の座を支持されます。
 この推移をみて、お弟子さんたちは尊敬の念や後悔の念を表したと、覚如上人は記されました。
 前段の「選択付属」の段に次いで今回の「信行両座」の段を置かれたことからも、覚如上人は、親鸞聖人が、法然聖人の門下で師の教えを正しく受け止められ、師から厚い信頼を寄せられていたことを示そうとされていることが分かります。

(図は、伝絵西本願寺本の「信行両座」を描いた部分です。ネットからお借りしています)

 この図では、親鸞聖人が信不退と行不退について問いかけをしておられる場面が描かれていますが、法然聖人にそうしたいと申し出ておられる場面ないようです。

 画面中央奥が法然聖人、筆をとって書きつけておられるのが親鸞聖人で、親鸞聖人の隣に座っておられるのが、聖覚法印と法蓮房信空のお二人です。
 親鸞聖人の前で頭を掻いている人が、遅参してやってきた法力房蓮生(熊谷直実)で、笠を放り出して慌てた様子が描かれています。前回の図では、履物が脱ぎ散らかされているように描かれていましたが、今回の図では揃えられているようにも見えます。いずれにしても、大慌てで走り登った様子が伺えます。

 (このブログは毎週2回、月曜日と金曜日に新しい記事を載せる予定ですので、また覗いてみてください)

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