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398.ご紹介します(17):「石炭都市宇部市の起源」


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 今日は、最近発刊された「石炭都市宇部市の起源」という本をご紹介します。
 この本は、宇部フロンティア大学の特任教授でもある内田鉄平氏が書かれ、昨年10月に宇部日報社から発刊されたものです。内田氏は、以前ご紹介したこともあります「古文書読み解きの会」でご指導いただいている方でもあります。

 宇部市は石炭産業とともに発展してきましたが、この本では、江戸時代に石炭が産業として注目され始めて以降明治に至る期間に、どのような形で拡大してきたのかということが資料とともに記述されています。
 これまで全く知らなかったことや、誤解していたことなども多く、目を見開かされた思いをした本でもありました。

 「石炭都市宇部」と私も思っていましたが、江戸時代に石炭で名前を知られていたのは、船木(村)の方だったのだそうです。船木にも石炭の層があり、早くから住民が燃料として石炭を使っていました。船木は宿場町として栄えていましたので、そのことが多くの人(旅行者)の目にとまり、「船木の石炭」という名前が広まりました。実際の生産量は船木村の南の有帆村が圧倒的に多かったようですが、「船木」の名前が広く知られていたようです。
 一方、当時の宇部村(旧福原氏の領地で現在の宇部市街の一部)は、農業のみを生業とする地域だったようです。

 その後、石炭は塩田(三田尻あたりで広く展開されていた)に使う燃料として注目され、長州藩はこれに着目し課税の対象とし、さらに蒸気船や製鉄の燃料として需要が高まることを期待して藩の専売品にしようとしましたが、明治維新を迎えます。

 明治維新の後には、国の法制変更もあって石炭事業の民営化が進められることになります。
 そのような中、福原氏の家臣は、石炭採掘による地域の振興や家臣団の生計維持を図ります。それまで、浅い炭層であったことも利して有帆地域が生産の中心でしたが、排水技術の向上などによって宇部村地域の深い炭層も採掘が可能になったことも後押ししたのだそうです。

 家臣団は、最初に「宇部炭鉱会社」を設立し、その後1886年に「宇部共同義会」という組織を結成します。
 この「宇部共同義会」という組織は、株主の出資により運営される組織なのですが、その目的を石炭鉱区の統一管理と地元の教育の支援や困窮した家族の支援におくという組織でした。後に採炭業をを開始するのですが、その収益をこのような社会事業に向けるという組織だったということで、明治維新によるこの地域の疲弊を何とかしたい、という思いが感じられます。「宇部共同義会」は1950年まで継続しました。
 その間、1897年に宇部興産の創業に当たる沖ノ山炭鉱組合が設立され、1942年には現在の宇部興産が設立され、文字通りの「石炭都市宇部」が成立することになりました。

 宇部市域の炭鉱が閉山されて、2017年で50年になるのだそうですが、「石炭都市宇部」の歴史を俯瞰することができる本でした。

 この本を読んで改めて実感したのは、船木という街の位置づけです。
 長州藩に「船木宰判」という地域の管轄機関があって、現在の宇部市(東部の一部を除く)と山陽小野田市(西部の一部を除く)に該当するのですが、その行政の中心は現在の船木にあったということです。船木には、代官所が置かれ、大名が泊まる本陣もあり、最初にも書きましたが多くの人が行き来した街だったようです。そういえば船木には今も簡易裁判所があります。

 この本の中に『防長風土注進案』という天保期(19世紀中頃)に藩が藩内の地理や風土を調べた資料が掲載されていました。
 その資料でも、船木は家が383軒、人口1537人で、主な産業は櫛、木綿、酒・醤油・油・酢、紺屋(染物)に加えて綿商、旅宿屋と生産、流通が盛んに行われていたことがうかがえます。
 その資料で、寺のある万倉村、今富村(両方合わせて表記されています)をみてみますと、251軒、人口が1045人、主な産業として、木綿織と懸木割木の2つがあげてありました。米の他に綿を栽培して紡ぎ織っていたのでしょう。後の方の割木は燃料用だったのでしょうか、懸木の方はよくわかりません。
 船木宰判に属している他の村を見ても、木綿に関わる産業をあげてある村が多くありました。現在日本では綿は全くと言っていいほど栽培されていませんが、当時は広く行われていたことがうかがえます。
 
(このブログは毎週2回、月曜日と金曜日に記事を載せる予定ですので、また覗いてみてください) 
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