FC2ブログ

269.ご紹介します(13):「原爆で死んだ米兵秘史」

20161024書籍   20161024書籍1

 先日のこのブログで、広島の原爆で死亡した米兵について調べその結果を米国の遺族に連絡した人、森重昭氏(オバマ大統領が広島でスピーチを行った後に歩み寄り抱擁した人です)が浄土真宗本願寺派のご門徒さんだという『本願寺新報』の記事をご紹介しました。

 その森さんが書かれた『原爆で死んだ米兵秘史』という本をご紹介します。
 この本で、森さんは原爆によって広島で死亡した米兵が12名いたことを突き止め、彼らが被爆するに至った経緯を記し、被爆死のことを知らされていなかった彼らの家族を探し出し、情報を伝えられた苦労などを綴っておられます。

 森さんが原爆の被害について調べ始めたのは、森さんが住んでいた土地の近くにあった己斐(こい)国民学校で荼毘に付された死体の数に疑問を持ったことがきっかけだったということです。広島市が編纂した『広島原爆戦災記』ではそれは800人だとされていたのだそうですが、森さんが自分で目にした数はもっと多かったということで、当時を知っている人に尋ねて回られたところから始まっています、1975年のことです。
 その過程で、森さんは米国人の捕虜が原爆で死亡していたという話を耳にし、またそれを描いた絵を目にします。被爆死した米兵はいたのか、なぜそのようになったのか、遺族はそのことを知っているのか・・・森さんの執念を感じさせる調査の内容が詳細に記されています。

 前回のブログで、米国政府は広島で米兵が被爆死したことを1983年までは正式に認めなかったという記事をご紹介しました。米国政府が当初それを認めなかったのは、広島には連合軍の捕虜がおらず原爆を投下しても被害が生じないという前提で広島に投下することが決められたということにあるようです。
 しかし、原爆投下の前7月26日に呉の海軍施設を爆撃した米軍の戦闘機や爆撃機が撃墜され、搭乗していた米兵が死亡したり捕獲されたりするということがあり、捕らえられた兵士の一部が広島の施設に収容され、その結果被爆死することになったという経緯が綴られます。

 この本を読んで、森さんの情報収集に対する執念のような熱意に感銘を受けました。
 最初は会社勤めの傍ら、休日を利用して調査を始められます。調査の対象者は、軍の関係者はもちろん、米軍機が墜落した地でそれを目撃した人に至るまで、実に多くの人の証言を集められます。また関連する日米の資料を読みこんで裏付けとする作業もあります。この部分では、森さんのジャーナリストとしての執念のようなものを強く感じさせられました。

 しかし、取材と調査で明らかになった事実、広島で米軍の捕虜が被爆死したという事実、をその遺族を探しだして伝えるということは、このジャーナリストとして事実を書き記すということとは別のもののように思えてきました。ファミリーネームだけを頼りに遺族を探し出すのですから、これは大変な作業だったと思います。米国にかける電話の料金も膨大な金額になったということも言われていました。
 ジャーナリストとしてそれまで知られていなかったことも含めて事実の詳細を記載するという作業にとどまらず、さらにそれを残された家族に伝えるという、困難なことに森さんは取り組まれたのです。
 本を読んでいて、森さんをその方向に向けさせたものは何だったのだろうか、ということが気になり始めました。

 オバマ大統領はスピーチの中で次のように言っています。
 「ここで殺された米国人たちの家族を捜し出した男性がいました。なぜなら、彼は彼らの喪失は自分たちの喪失と等しいと信じていたからです」
 『本願寺新報』にも森さんの言葉として、「残された者の痛みには敵も味方もない」という言葉が記されていました。。

 森さんご自身が被爆者であり、親族や級友を原爆で失った当事者でした。その大切な人々の死を目にし、その悲しみ、つらさは私たちの想像の及ばないものだったと思われます。一方、米国の兵士の遺族には彼らが被爆死したことは伝えられておらず、漠然と戦死したという通報が行われていただけだったそうです。
 大切な人を亡くした悲しみには「敵も味方もない」、そのことが森さんを突き動かして、遺族を探しだして死の状況を伝えるという困難な作業に向かわせたのではないかと思います。

(写真は『原爆で死んだ米兵秘史』の表紙です)

 全く別の話になるのですが、この本をアマゾンで注文したら翌日には手元に送られてきました。便利になったものです。
 なのですが、そのような便利さのおかげで、以前あった「街の本屋」が全部と言っていいほど姿を消しました。暇を見つけてぶらりと足を運んで、そこにある本を手に取って眺める、店主を雑談をする、といったことがなくなりました。思いがけず面白い本に出会うという楽しみもなくなりました。 

(このブログは毎週2回、月曜日と金曜日に新しい記事を載せる予定ですので、また覗いてみてください) 
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント

カウンター
カテゴリ
検索フォーム
リンク
最新記事
最新コメント
月別アーカイブ
最新トラックバック
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR