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102.ご紹介します(4):「二人が睦まじくいるためには」

 
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 1月27日のNHKの「クローズアップ現在」という番組で吉野弘さんという詩人が紹介されていて、「祝婚歌」というタイトルがつけられた詩が取り上げられていました。
 これまでも結婚式の祝辞の中でその詩の一部が取り上げられているのを聞いた記憶がある詩なのですが、全文については知りませんでしたし、吉野さんについても全く知らなかったのです。
 その詩が掲載されている本、「二人が睦まじくいるためには」を注文して最近入手できましたので、今日はこの詩をご紹介したいと思います。

 まず、少し長くなりますが詩の全文です。

 「二人が睦まじくいるためには
  愚かでいるほうがいい
  立派すぎないほうがいい
  立派すぎることは
  長持ちしないことだと気付いているほうがいい
  完璧をめざさないほうがいい
  完璧なんて不自然なことだと
  うそぶいているほうがいい
  二人のうちどちらかが
  ふざけているほうがいい
  ずっこけているほうがいい
  互いに非難することがあっても
  非難できる資格が自分にあったかどうか
  あとで
  疑わしくなるほうがいい
  正しいことを言うときは
  少しひかえめにするほうがいい
  正しいことを言うときは
  相手を傷つけやすいものだと
  気付いているほうがいい
  立派でありたいとか
  正しくありたいとかいう
  無理な緊張には
  色目を使わず
  ゆったり ゆたかに
  光を浴びているいるほうがいい
  健康で 風に吹かれながら 
  生きていることのなつかしさに
  ふと 胸が熱くなる
  そんな日があってもいい
  そして
  なぜ胸が熱くなるのか
  黙っていても
  二人にはわかるのであってほしい」

 この詩の中の
 「互いに非難することがあっても 非難する資格が自分にあったかどうか あとで 疑わしくなるほうがいい
  正しいことを言うときは 少しひかえめにするほうがいい
  正しいことを言うときは 相手を傷つけやすいものだと 気付いているほうがいい」
 という部分に強く共感を感じました。
 吉野さんは昨年亡くなられたのだそうですが、番組で紹介されていた、遺品から見つかった次の文を一緒に読みますと、吉野さんが言われたかったことが伝わってくるような気がします。

 「人間は、その不完全を許容しつつ、愛し合うことです。
  不完全であるが故に退け合うのではなく、人間同士が助け合うのです。
  他人の行為を軽々しく批判せぬことです。
  自分の好悪の感情で、人を批判せぬことです。
  善悪のいずれか一方に、その人を押し込めないことです。」

 私たちは、自分で考え、自分の意見を述べ、また相手の声を聞くということを行いますが、よく考えてみるとその行動の中心にはいつも自分というものが据えられているようです。自分の意見を述べる場合はもちろんのこと、相手の考えを聞く、という場合でも、それは自分の考えと合っているのだろうか、という聞き方をしているように思えます。
 この相手は自分の味方なのか、敵なのか、自分に有益な人間か、良い人間か悪い人間か、と思考と行動の中心にはいつも「自分」が置かれているように思えます。

 自分の考えに道理があって相手の考えが誤っている、と思えるときが一番厄介なのかもしれません。私は正しいことを述べているのですから、もう怖いものはありません、正義に反するものは悪なのです・・・と居丈高に主張を強め、相手を非難してしまいます。そのことによって、私は「言ってやったぞ」と充実感を感じていて、実はそれが隠れた主な目的だったということもあるかもしれません。

 吉野さんの詩の奥には、太平洋戦争の敗戦で、それまで持っていた価値観が一気に崩壊したという体験があると、番組で紹介されていました。
 私の存在も、私の意見も、私の正義もいつも相対的なのだ、という感覚を終生持ち続け、そのことで虚無的になることなく、人にやさしくあり続けようとした詩人だったと思います。

 NHKの番組の記録はこちらです⇒http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail02_3606_all.html

(写真は、その本です。「3月1日第21刷発行」とされています。注文から入手までに珍しく時間がかかったのは、品切れだったからのようです)

 帯に「初々しいふたりと 少し疲れたふたりに」とあってちょっと笑ってしまいました。その「少し疲れたひとり」がいたく感銘を受けたのです。

(このブログは毎週2回、月曜日と金曜日に新しい記事を載せる予定ですので、また覗いてみてください)

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